スタジオジブリ【コクリコ坂から】


東京オリンピックを間近に控えた横浜の街にある、歴史ある高校では、一つの問題が持ち上がっていた。戦前以来の伝統がある校舎を作り変えるか否かという、自分たちの「社会」に関わる問題に、学生たちは大いに盛り上がり、エネルギーを費やして、自らの「解放区」さえ構築しつつあった。

そんな活力溢れる学校に通う少女、海は、取り壊し反対のパフォーマンスを行っていた俊を助けたところを写真に撮られたが、それがきっかけで「名誉の負傷」をした俊の新聞作りを手伝ったりと徐々に仲を深めていく。

二人の間には甘やかなラブシーンは存在せず、より穏やかで確かな心の結びつきと、そして自らの出生にも関わるような、「秘密」の共有があるだけだった。

学生の自主性が大々的に認められつつあった戦後の一時期、管理教育やスポ根スパルタが全盛になるまでのごくわずかな間だったが、大学生のみならず高校生たちまでもが、自分自身で何が大事なのか、守るべきものは何かを考え抜き、しかし卑屈にも暗くもならずに青春を謳歌できた時代が確かにあった。

本作の海たちの清潔さと堂々とした立ち居振る舞いはその当時の模範的な学生、あるいは当時の青春映画に出演していたスターを思わせる。校内を二分するような争いを真っ向から解決しようとする海たちの姿は本作のハイライトだが、同時に彼らの恋愛模様を端的に示しているとも言える。

決して今時とは言えないが、今の時代に必要な何かを海たちを通じて実感できる、そんな作品である。

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